「 今 月 の 是 眞 」

~展示室より~

 

柴田是眞が原画を描き 日本橋はいばらが出版した刷り物「花くら遍」。

ギャラリーでは季節に合った画題の作品を展示中です。

 

 早いもので暑い暑いと言っていた夏も過ぎ急に冷え込んできました。衣替えの季節です。詰襟の学生服時代を思い出します。あんな時代遅れの制服が未だにまかり通るのは不思議です。まだ寒くもないのに厚手の詰襟、逆に初夏にはまだうすら寒い日もあるのに白シャツ姿、何とも自然を無視した暴挙です。
 しかし軒先に着物を掛けて風を通すのは更衣の季節の今も変わらぬ風景です。今年も残すところ3ヶ月です。

 この季節は花も少なくなりますが、まだ鶏頭は元気です。今では花屋の店先ではいろいろな形をした、色も様々な鶏頭がありますが、是眞の頃はまさに鶏冠を思い出させる形です。野辺に出れば野仏に寄り添うように咲く秋草がのどかです。薄に黄色い花は女郎花でしょうか。野辺で一杯もいいのですがこの季節、お祭りや棟上げなど慶事も多く緋毛氈に菰冠もつきものです。

 夏に実った瓢箪やへちまも良く乾き使い頃です。是眞の弟子筋の蒔絵師はいろいろな素材に蒔絵を施ししゃれた逸品に仕立てていますが、特に瓢箪が好きだったようです。盃や帯どめにして楽しんでいます。

 

 さて最後は三島手の茶椀。三島神社の籤を模様化したとも言われます。陶土がまだ乾ききらぬうちに判のようなものを押し付けて模様を付けますが、その判が印花。めでたく花にたどり着きました。

 

 今月も是眞の花は多彩です。