2019年を振り返って

 2019年もあと残すところ1日。あっという間の1年が終わろうとしています。
 5月に隔年開催の伝統工芸木竹展があり、6月には巡回展が神戸の竹中大工道具館で実現しました。道具館の赤尾前館長には長年ご厚誼をいただいておりますが、そのご縁で念願だった巡回展をお引き受けいただき感謝に堪えません。新しい展開を得て作家も奮起しています。巡回展実現までには道具館、木竹部会役員の昨年からの長い準備がありました。ありがとうございました。
 その後8月から9月には竹中工務店東京本店内ギャラリーエークワッドで「木工藝 清雅を標にー人間国宝 須田賢司の仕事ー」が開かれました。同ギャラリーの展覧会としては今までになく多くのお客様にご来場いただけたそうです。東京藝大美術館や福岡埋蔵文化財センター、群馬の県埋蔵文化財調査事業団、各地のご所蔵家の皆様のご協力を得て、拙著「木工藝」を実物で表現する展示ができました。以前神戸の竹中大工道具館で開催しましたが、より充実させたものを東京で開催できてとてもうれしく思っています。日本の木工史とその上での私の仕事、作品、さらにそれが生み出される環境、仕事場の再現という3部構成は画期的なものでした。充実した展覧会になりました。その後12月上旬まで小規模ながら福島にも巡回しました。
 11月には地元群馬県甘楽町町制施行60周年記念事業の一環として「木工藝 人間国宝須田賢司の仕事」展が開催されました。この展覧会の特徴は何といっても柴田是眞原画による版画「花くらべ」120枚の一挙公開でした。私の作品の生まれる背景として外祖父の漆芸家山口春哉の系譜があり、その3代前の師が是眞なのです。120枚が一度に並んだことはかつてないと思います。壮観でした。この企画を立ててくださった町に感謝申し上げます。
 多くのエポックに恵まれた一年でしたが、何といっても文化庁による記録映画の完成が記憶に残る年でした。この時点における私の今までの集大成とも言える作品が出来ましたが、その制作の様子を細かく記録してくださいました。作品とともに「永遠」に保存されるということです。何か生きてきた証を残せたように思います。それに加えこの映画が各方面で好評をいただきいくつかの賞を頂きました。あのキネマ旬報にも紹介されました。毎日映画社の柿沼監督始めスタッフの皆様のお蔭です。声優の堀内賢雄さんのナレーションもぴったりでした。
 そして今年最後のトピックはテレビの取材でした。正月4日午後5時から7時まで「人生宝談」に出演いたします。3人の人間国宝が出演します。作品制作より私(私たち夫婦)の人生に力点が置かれたようで気恥ずかしい限りです。
 また5人の若手作家との研究会も2年目となりますます、皆さん益々やる気が出てきたようです。頼もしく思っています。
 このように健康で充実した一年を送れたことに感謝しています。ありがとうございました。来年もいろいろな仕事が待っています。まだまだ走り続けます。明年もよろしくお願いいたします。
 皆さま、よいお年をお迎えください。